『モンスターハンター:ワールド』ではベースキャンプでの装備変更が可能。ペイントボールが撤廃!
“PlayStation E3 MEDIA SHOWCASE”で発表されたPS4用ソフト『モンスターハンター:ワールド』について、カプコンの辻本良三プロデューサー、藤岡要アートディレクター兼エグゼクティブディレクター、徳田優也ディレクターにお話をうかがった。
▲左から辻本さん、藤岡さん、徳田さん。 |
なお、インタビュー中は敬略称。
根本は変えずに『モンスターハンター』を見直した
――開発期間は、どのくらいかかっているのでしょうか?
辻本:構想も含めると4年近くかかっています。
――最初は、どのようなタイトルとしてスタートしたのでしょうか?
辻本:『モンスターハンター』自体も長く続けてきて、どこかで見直す必要があると思い、このタイミングで制作をしました。
このタイミングで据え置きに参加してみると、表現できることがたくさんありました。ずっと作って来た『モンスターハンター』の世界の中でのモンスターの生態などですね。
タイトルの“ワールド”には、ワールドワイドで遊んでほしいという意味も当然あるのですが、『モンスターハンター』の世界を表現して、その中にハンターとして飛び込んでほしいというコンセプトもあります。
これまではナンバリングをつけていましたが、『モンスターハンター』を見直すタイミングとして、コンセプトをタイトル名にもってきました。
藤岡:気持ち的にはナンバリングなんですが、ワールドはあくまでもサブタイトルなんです。『モンスターハンター』の“ワールド(世界)”です。
――なぜ『モンスターハンター』従来のコンセプトに立ち返って作ろうと思ったのでしょうか?
辻本:当時と今できることは、かなり違うと思ったので、現状の技術で表現したら、どうなるかという部分ですね。
藤岡:一番最初に『モンスターハンター』を作った時、カプコン初のグローバルなものを目指していました。そこから『モンスターハンター』が成長していって、現在の形が作られました。ひとつの形はできたと思うのですが、どうしても超えられないグローバルの壁がありました。それを考えたい、取り入れたいと思いました。
辻本:こう言うと、今作ではグローバルだけを考えているように思われそうですが、そうではなく、コンセプトは国内で今まで遊んでくれた人も絶対満足してくれたうえで、グローバルであったり、もっともっと広がるようにしたいと思っています。日本が入ったうえでのグローバルです。
徳田:僕の入社動機がPS2『モンスターハンター』のPVを見て、モンスターがただの敵でなく、生態系の一部として描かれている部分にとても共感したためです。そのコンセプトをもとに、今のスペックで作っていきたいなと考えました。
モンスターの生態系をしっかり描いていく従来のコンセプトと、これまで培ってきたよい部分をあわせた両軸が今作のコンセプトになっています。
藤岡:海外のファンも増えてきたので、もっと素直に彼らにも遊んでもらいたい。さらにいえばもっと日本のユーザーと交わってもらいたいですね。ただ、いろいろな要因で広がらないものにちゃんと向き合って、作ろうと。
――グローバルの壁は、どのあたりに感じていましたか?
藤岡:表現力のひとつからしてそうですし、遊び心地やゲームデザインもそうです。『モンスターハンター』の個性としてよい部分があるのに、うまく伝わらないことが悔しいところでした。
アクションをひとつ行うたびに、止まる部分であれば、僕らは駆け引きとして導入していますが、これがあるだけでプレイしてくれない方もいらっしゃいます。
日本では、プレイヤーの皆さんと一緒にタイトルが成長できたので、それが非常によかったと思っています。そういう意味では、根本を変えたいわけではなく、あらためてゲームデザイン、思想を見直そうと思っています。
フィールドの広さは、これまでの2.5倍に! ベースキャンプでの装備変更やペイントボールの排除も
――『モンスターハンター:ワールド』のPVには『モンハン』としての要素が全部つまっていましたが、改めてゲームとしての構成を変えたような感じがしました。
藤岡:現地で何かを調達しながら進めていくなどが、そもそもの思想としてすごく強くありました。そういう現地でのアイテム調達などに関しても、アクションが途切れたらダメだと思いました。今作に関しては、スムーズにアイテムなどを採って、使っていけるようにしました。左手に装備しているスリンガーもそうですね。
アイテムを採って、使うサイクルをすごく早くしたかったんですよ。これを行うことで本来やりたかった、いろいろなアイテムを使いながら武器や防具と織り交ぜて遊んでいく流れが、ようやく形になってきたかなと。
――地形を使ったアクションも見られましたね。ゲームデザインやモンスターの調整が非常に大変そうだと思ったのですが。
徳田:大変ですね(笑)。フィールドで使えるものはなんでも使って、これでもかというくらい密度の高いフィールドになっています。
藤岡:これまで区別されていたエリアは当然つなぎたかったので、一般的に言われる“オープンフィールド”のテイストになるかなと思ったのですが、『モンスターハンター』的には凝縮された中でいろいろな遊びをしていくのがよいかなと。
ちょっと歩いたら何かある、何か見つかったらどんどん使っていく。そして何かが起こる環境を作っています。
辻本:ゲームのサイクルとして、拠点があってフィールドに行ってという部分は同じです。フィールドに行けば、エリアが全部つながっているので、ロードなくシームレスに遊んでいただけます。
藤岡:どこまでもつながっているわけでないのですが、いわゆる狩り場の環境は“シームレス”になっていますね。
――今まで区分けされていたフィールド内が、すべてつながったような広さになるのでしょうか?
辻本:広さはもうちょっと広いですね。2倍くらいでしょうか。
藤岡:要素として複雑に絡んでいるので全体は2.5倍くらいです。
――その広大なフィールドでモンスターを狩るんですね。
藤岡:フィールドの中にはモンスターのテリトリーがあって、そこから引っ張り出すといった、行動をしながら遊んでいきます。
――映像でリオレウスが登場したのは、リオレウスのテリトリーに入ったからなんですか?
藤岡:リオレウスは、もともとはあの辺にしかいないので、どうやって引っ張り出すか、そこにどのようにして他のモンスターを連れていくか、ということを考えながら遊んでほしいですね。
徳田:単純にモンスターの行動を覚えることもできるんですが、リオレウスの痕跡を集められます。生息がわかるので、そろそろ移動しそうだから、このモンスターを連れて引っ張り出そうといったこともできます。
そのためにベースキャンプも複数あります。ファストトラベルで先回りしていって、生息域に行ってから連れていくといった戦略も楽しめます。
――ベースキャンプの在り方も変わっていました。ベースキャンプで装備が変えられるようですが。
藤岡:そういったこれまでの要素も、一度撤廃してみようかなと。これまでは装備を決めてクエストが始まったら変更できませんでしたが、クエスト中に自由に変えられてもいいんじゃないかなと。
――途中で装備の相性がよくないと思ったら変えられるわけですね。
徳田:今作ではターゲット以外のモンスターがどんどん出てきますので、ターゲット以外のモンスターに効果的な属性じゃなかった時に、ベースキャンプに帰って変えられます。これまでだとクエストリタイアをして、諦めてしまうような場面をなくせるようにしたかったです。
――デモではクエストコンプリートと最後に出ていましたが、クエストとしてフィールドに出るといった部分は変わりないのでしょうか?
徳田:そうですね。自由にクエストの目的に囚われず遊ぶこともできます。
藤岡:その部分は今までのモンハンと一緒で、クエストとしてフィールドに入っていき、目的を達成するというサイクルですね。そして手に入れた素材で何か作ると。
辻本:もちろん、報酬もあります。
――シリーズでおなじみの部分と、新しく作られた部分があると思いますが、新しく作られた部分についてお聞かせください。
藤岡:先ほども言っていたアクションの途切れをなくすということ。回復ひとつとっても、止まらずに隙を見ながらシームレスに行えるようになっています。
徳田:導蟲(しるべむし)を飼っていまして、これが利用できるアイテムとか、モンスターの痕跡を教えてくれます。痕跡をたどらせていくと、モンスターの居場所までガイドしてくれる猟犬のようなものを作りました。
――ガイドはマップにマーキングされていく形なんですか?
藤岡:あるターゲットに対して導いてくれる形です。自分が特定のモンスターの痕跡を多く集めていると、対象のモンスターがいる場所へと案内してくれるようになっています。
徳田:自分が知っているところであれば、マップの位置まで連れて行ってくれます。
藤岡:使い方はいろいろなんですが、ベーシックなところはガイドになります。導かれたとおりに歩いていけば、基本的にはターゲットへ向かっていけます。
辻本:エリアをなくして1つにして、密度を高くして高低差をつけると、迷うケースも多くなる。導蟲(しるべむし)にガイドしてもらうことで迷い辛くなるかと。迷った時は示された方向に行けば大丈夫です。
藤岡:タグをうてば、そこまで連れて行ってくれます。
辻本:方向だけじゃなく、道も教えてくれます。
――PVなどで光っていたのが導蟲(しるべむし)なんですね。アイテムの場所とかも教えてくれるんですか?
徳田:そうです。薬草がココにあるんだよとか、近くにアイテムがある時に知らせてくれますね。
藤岡:こういうものを頼りに遊ぶというのが、今までと感覚が違うかなと思います。それで今作はペイントボールがないんです。
また、今まで以上に環境依存を重視していますので、自然にある罠や落石、そのへんにいる小動物、回復効果がある植物、毒をばらまく植物などもあります。
辻本:木とかで川がせき止められているようなところがあるのですが、そこを爆弾やリオレウスのブレスで破壊すると、水が流れて来ます。これを利用して、モンスターを崖の上から落とすこともできます。映像中でも少し出ていた要素です。
――マルチプレイに関してお聞かせください。
藤岡:マルチプレイへの参加の仕方も、わかりやすくしています。今まで通りの部分は、ロビーでクエストをはって、それを遊んでいくところですね。
今作ではクエストに途中参加ができるようになりました。先に誰かが行っているクエストに後から入ることが可能です。
クエストに入っている時に、「やばい」と思ったら救難信号のようなものを出せて、それがサーバー上の人たちに送られます。そうしたら救難信号を出した人のクエストがボードに貼られます。
――映像の最後にあったのがそれでしょうか?
徳田:そうですね。途中でモンスターが出てくるので環境が変わる。ジリ貧だなと思ったら、とりあえず救難信号を出しておこうみたいな形で使っていただければ。
――ワールドワイドでのマッチングは可能なのでしょうか?
辻本:マッチングで言いますと、ワールドワイドのマッチングも可能です。言語で日本語を設定すれば、日本語を対象にしたマッチングもできます。
――PVに登場していた新モンスターの名前を教えてください。
藤岡:モンスターの名前はアンジャナフです。最初は名前がわからないのですが、痕跡を集めていくと名前がわかるようになります。
黄色いタイプがドスジャグラスで、その小型種がジャグラスですね。
――ドスジャグラスは獲物を飲み込んで、吐き出したものをジャグラスに与える生態があるんですね。
藤岡:そういう行動をします。腹に獲物を入れている時に攻撃を加えると吐き出します(笑)。
――ハンターの左腕についている小型のボウガンのようなものは、なんなのでしょうか?
藤岡:スリンガーという小さい弓のようなものです。こういうものを使って行動の隙を作っていきます。
今までは石ころなどを採ったら、選択して使わなければならなかったのですが、もっと気軽に使ってもらいたいので、アイテムとは別枠で飛び道具系はスリンガーで管理するようになっています。そのため、アイテムとして補充されることはなくて、とったら基本的にその場で使うようになります。
辻本:ヒカリゴケなどを使って飛ばすと、暗いところが明るくなったりします。
――ロープアクションのようなものが見られましたが、こちらについても教えてください。
藤岡:ロープはサポート的に使うもので、フックできる場所があれば使えます。ふっ飛ばされた時に状況が合致していればオートで使ってくれます。ワイヤーアクション的に何かをやらせるものではありません。
――モンスターに対して距離を置きたい時や、気づかれないようにするには、従来通り草むらなどに隠れる必要があるんでしょうか?
藤岡:そうですね。あとは、特殊装具を使えば気配を消せるので、気配を消すことでアイテムを補充しに行くことができます。
――モンスターへのダメージが数値で出るようになりましたが、こちらについては?
藤岡:従来は、モンスターの挙動を見て状態を判断してほしかった部分ですが、それは今作でも変わりません。弱ったなとか、スタミナ減ったなとかは、目で見てわかるようになっています。
ただ、国内外でいろいろな意見を聞くと、リアクションがわかり辛い部分が多いというものがありました。体力バーを出すなどの案もあったのですが、やっぱりモンスターを見て判断する要素は残したかったので、どれくらいダメージを与えているかの指針を出す意味で数値を出しました。
それによって、「ここのダメージ少ないから、あっちを狙ってみよう」とか「この属性は効いていないから、別の装備にしてみよう」などが、より明確になります。
辻本:数値表現に関しては、今までのモンスターを見て判断するということを崩さずに、もともとプレイヤーの方、今から始める方の両方にメリットがあるシステムになるということで導入しました。
藤岡:開発している自分たちが違和感なく受け入れられたので、うまくいっていると思っています。
――ロゴがこれまでのシリーズとは、大きく変わりましたが、どのような意図があったのでしょうか?
辻本:今作を作るにあたって、『モンスターハンター』を見直した時に、ロゴをリニューアルしました。もう一度“モンスターハンター”を目立たせたい気持ちと、シンプルな形で改めて伝えたいという思いがあります。
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