2015年6月26日 星期五

任天堂を退職しました

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任天堂を退職しました

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2014年12月をもって、約15年勤めた任天堂を退職しました。
思い起こせば、就職氷河期の真っ最中、劣等生の私はなんとか滑りこむ形で入社できました。
入社して10年間は、ハードに関する仕事をしていました。
抜き取り検査員、EMI対策、半導体評価、製品安全法令調査、生産工場の品質指導や不具合是正、トランプ・麻雀牌の品質指導、ライセンスグッズの技術的監修、顧客クレームの技術サポートなどです。
そして、退職間際の四年間、私は「ユーザー目線評価」という業務についていました。今振り返ると、この業務が一番自分の能力を発揮できた仕事でした。
ユーザー目線評価=任天堂で行う新作ソフトの評価システム。製造本部のベテラン社員にお客さんの視点で遊んでもらい、評価レポートを書いてもらう
出典:任天堂HP 社長が訊く『スーパーマリオ 3Dランド』プロデューサー 篇( http://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/arej/vol2/index4.html )
私はグループで最も若く技術とゲームに明るかったため、中心メンバーとして働くことになりました。
仕事を通じて社内外(ファースト、セカンド)の数多くのソフト開発者と交流を持て、この時が自分の会社人生の中で最もやりがいを感じましたし、夢中で仕事に打ち込めました。
一緒に仕事をさせてもらった開発者は、シロウトの意見にもかかわらず丁寧に耳を傾けてくれました。
理由や仕様を細かに説明してくれたり、開発終盤の追い込みにもかかわらずメールでの一問一答を返信してくれたり、私たちの職場にまで足を運んでプレイ動画の撮影やミニ討論会を開いて意見を拾ってくれたりと、開発陣の「一人でも多くのお客さんに楽しんでもらえるソフトを創りたい」という熱意や姿勢は頼もしく素晴らしいと思いました。
皆さん、コミュニケーション能力の高い方ばかりで、問題点の共有も早いし仕事の段取りもテンポ良く進みます。このスピード感が「開発の現場感」だと感じました。
個性的で素晴らしい人が多くて、仕事の合間に話してくれた「ゲーム哲学」は奥深くて惹きつけるものがありました。
私たちが関わらせてもらったタイトルの中には、前評判を超える売上を記録するものも数多くあって「少しは役に立てた」と喜びを密かにかみしめたりも出来ました。
任天堂の経営方針で「ユーザー人口の拡大」を掲げています。
「ユーザー目線評価」というのも、「ユーザー人口の拡大」に役に立つ取り組みの一つだと思います。
私はこのような仕組みを持って商品づくりをしてるゲーム会社は世界中で任天堂以外無いと思いますし、この仕組みを誇りに思います。
ですが、私どもの活動に理解をしていない人物がいました。
直属の上司である「部長」です。
ユーザー目線評価に係る仕事の相談(特にヒト・モノに関することです)を持ち込んでも、言われることはいつも同じでした。
「開発の仕事なんか手伝わなくていい。職務分掌には書かれてないだろう!」と怒鳴り上げるのです。
部長の本音としては、「他部門から仕事が無いと見られると困る(組織運営力に疑問を持たれる)」「開発の下請けとして扱われるのはプライドが許さない」ということでしょう。
製造本部の私達がハードやソフト開発業務に日常的に関わるというのは、違和感があるかもしれません。
その一方、他部門だからこそ忌憚なく意見をぶつけることができたわけです。
私が入社して、任天堂の製造部門を取り囲む環境は大きく変わりました。
任天堂は一貫してファブレス生産方式を採用していますが、この10年のも間に国内製造委託から中国のEMSに委託するようになり、国内での製造はほぼなくなってしまいました。
今の製造部門は、ほぼ開店休業状態です。
そんな現状のなか、任天堂の製造部門は規模の縮小や業務の整理ができないままでいます。
縮小するには、役職ポストを失う人が多いのと他部署への人材受けいれが難しい事情があるのでしょう。
こういうことを言うと任天堂は変化に対応できない会社と決め付ける人がいるかもしれませんが、決してそうではありません。この長い赤字の期間、ハード開発部門・営業部門…そのほかの部門でそれぞれ組織統合や部門廃止、業務内容見直しが実施され、苦痛を伴う改革を果敢に実行してきました。
私はいつになったら、改革の順番が回ってくるのだろうとずっと期待していましたが、最後まで思いは届きませんでした。
率直に言って、私の部門は大企業病と「ピーターの法則」が効き過ぎた職場でした。
「部長」の言動は、まさに大企業病そのもので、セクショナリズムの現れです。
入社して2回ほどしかお話を伺えなかった山内前社長からの訓示で私が今でも覚えていることは、「セクショナリズムにとらわれるな」ということでした。
私よりも社歴の長い社員たちが山内前社長の遺訓をすっかり忘れてしまって、組織構造にとらわれてるのは嘆かわしい限りです。
ピーターの法則とは、次の事を言います。
「階層的な組織に属する人間は、必ずその人の無能レベルまで昇進する」
ピーターの法則 ー wikipedia
私は他部門でも働いたことがあるので痛感したのですが、役職者のレベルの低さに驚きました。
自分で部門やグループ運営の計画立案できないし、実行力にも乏しい。
ましてや、事務処理能力やITスキルも一般社員以下。その問題役職者には、例の「部長」も含まれています。

部内に残った少数の優秀な役職者とキーマン一般社員が組織を動かしているという実態です。

聴覚障害者に対するハラスメント人事異動

ある日の朝礼で私のグループのグループマネージャーから、異動してくる人事発表がありました。
「X日より、聴覚障害者のAさん(女性)が異動してきます。」
常識的に考えて、ゲームの評価において聴覚に障害があるのに業務として従事させるなんてありえません。
私は業務運営に責任を負ってたので、猛烈に抗議を行いました。
しかし、ひとしきり反論を聞いたあと、グループマネージャーは
「部長が決めたことですから・・・」
と力無くつぶやいて、朝礼は終了しました。
グループマネージャーは部長には逆らえず、自分の身がかわいいので、イエスマンにならざるを得なかったのでしょう。部門を預かってる役職者にもかかわらず無責任です。
X日、とうとうAさんが異動でやって来ました。
音が聞こえないため、ゲームに苦戦するかと思ってましたが、その点は杞憂に終わりました。
彼女は試行錯誤を繰り返しながら、ゲームを進めてくれました。
しかし、問題は別のところで発生します。
彼女はゲームの感想をうまく書けないのです。
聴覚障害者に見られる「9歳の峠(壁)」と呼ばれる言語表現の未熟さのため、「書く」ということに大きくつまずいてしまいました。
社内を探せば、彼女が苦労せず出来る仕事もあるはずなのに、向いていない酷なことをさせてると思いました。
どう考えても彼女の不得意なことをさせる必然性は無いのです。
彼女も真面目なので、彼女を世話をする女性社員に「ろう学校でまじめに勉強しておけばよかった」とずっとこぼしていました。時にはうまく書けないことを悔しく思い、涙を流すこともありました。
彼女が私のグループに来て数週間が経とうとした頃、仕事ができない・文章を書けないというプレッシャーから彼女はとうとう精神的に追い込まれます。
ある日の午後、彼女が自席から消えました。
世話役の女性社員の携帯に、睡眠薬を大量に飲んで自殺することをほのめかすメールが届きました。
関係者が必死に探したところ、消えた彼女は駐車場に止めてある自分の車の中で薬を飲んで、目をつぶっていました。
車の外から呼びかけても音が聞こえず通じないので、無理やり鍵を開けて助けだしたのですが、彼女の様子から大量の睡眠薬の影響があったようです。
会社のマニュアルでは、総務部門が救急車を呼ぶことになっているのですが、現場に駆けつけた「部長」と総務のグループマネージャーが結託し、事が大ごとになるのを避けるため救急車の出動を要請しないことを決めてしまいました。
総務のグループマネージャーが地元の病院に運んだのですが、救急扱いでは無いので待合室で診察の順番が来るのを意識がもうろうとしながら待たされて、胃洗浄の処置を受けて自宅へ返されました。
その日以降、彼女は会社に出社すること無く、そのまま任天堂を退職してしまいました。
総務のグループマネージャーは事業所労働者の安全衛生や生命を守る役割があるにも関わらず、不祥事の発覚を恐れて救急車を呼ばないという人命軽視の判断がまかり通すのは酷い話です。
ましてや役職者の自己保身で従業員の生命の安全が危険にさらされることなどあってはならないことです。
そして、このような事態を起こすことになったハラスメントまがいの人事異動を決めた「部長」は全くペナルティを受けていません。これも腹立たしい話です。
このままでは、うやむやになりかねませんので、下記の公共機関にここでは未記載の事実を記載し、通報させていただきました。
・法務省 インターネット人権相談窓口(http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html)
・京都府 障害者支援課
・京都南労働基準監督署
・一般社団法人京都府聴覚障害者協会(http://www.deaf-kyoto.or.jp/index.html)


このほかにも、「部長」は部門の目標や方針を自分一人で決められないので、ほぼ毎日お気に入りの女性契約社員と二人きりでこもって1時間以上の長時間「仕事の相談」をするのが日課でした。
一千うん百万という高額年収を貰っているエグゼクティブ役職者が、時給1000円程度の契約社員と連日仕事の打ち合わせを必要としているという光景は、ナンセンスとしか言いようが無いです。
そして、その光景をおかしいと指摘できない雰囲気が職場には蔓延しており、終わってるとしか言いようがありません。

また、この「部長」が決裁した高額決裁案件は、ことごとく失敗しているという始末です。
・数億円にのぼる超大型全自動生産機の製造契約に不備があり、「とある商品」ラインナップの製造ができなくなってしまっている
・自社他部門での導入実績を理由に自部門導入を決定した文書管理ソフトウェアが現場のニーズにマッチせず使いにくいため業務効率を落としてしまってる
これらの高額設備投資は、一体誰のためになっているのか疑問に思うことが度々でした。

このような「部長」が上にいる限り、私がやっていた「ユーザー目線評価」という組織横断的なプロジェクトは成功しないし、自部門閉じこもって楽な仕事で高い給料を貰えればと良いという曲がった根性が身につきそうなので、退職することにしました。
(当然、社内異動を考えましたが、私が抜けたらグループが休止状態になるのは予測でき、同僚に迷惑が掛かってしまいます。そこまでの身勝手は出来ませんでした。)
私は、任天堂で出来なかった仕事を新天地で、再スタートしたいと思っています。
「ゲームで人を幸せにする」という目標は、任天堂を離れてもブレない軸として持っておきたいです。

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