【ビジネスの裏側】
ソニー・MSから“周回遅れ”「任天堂」ネット対応の酷さ…“いじめの温床”3DS、“通信脆弱”WiiU
ゲームをインターネットに接続して遊ぶのが当たり前になる中、任天堂が苦境に立たされている。携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」で、ネット機能を通じたいじめなどの問題が顕在化しているためだ。据え置き型ゲーム機「WiiU(ウィー・ユー)」でも通信環境でライバルに差を開けられており、ゲーム愛好家からは「任天堂はもはやネット分野で周回遅れ」との厳しい声も聞かれる。
3DSが犯罪の温床に
「保護者のみなさまへ大切なお願いです」
12月初め、任天堂の公式ホームページ(HP)にこんな書き出しの文面が掲載され、関係者の話題をさらっている。
この一文に続き、3DSやWiiUでネットを使用する際に、見知らぬ人とのやり取りを制限できる機能があることを紹介。ここ数カ月、任天堂が想定していなかった事態が頻発していることへの対応だ。
任天堂は11月1日、ネットを通じてユーザー同士が日記やメモを交換できる3DS用無料ソフト「いつの間に交換日記」「うごくメモ帳3D」でわいせつ画像などのやりとりがあったとしてサービスを停止した。
11月下旬には3DSで裸の写真を撮影され、精神的な苦痛を受けたとして、茨城県内の小学6年の男児と両親が地元ハンドボールチームのチームメートらと保護者らを相手取り、1千万円の損害賠償を求める訴訟を水戸地裁龍ケ崎支部に起こした。
訴状などによると、男児は平成24年から、所属するスポーツ少年団の練習や合宿で、チームメート数人からズボンと下着を脱がされるなどのいやがらせを受けた。25年には、友人宅でチームメートらに服を脱がされ、3DSで全裸の写真を撮影されたとしている。写真は「いつの間に交換日記」でチームメートら数人に送信されたという。
3DSは、国内だけで1330万台以上販売されており、ソフトのサービスを停止する影響は大きい。それでも3DSが犯罪の“温床”になっているため、任天堂は「家族で安心して遊べることを優先した」と苦渋の決断を吐露する。ただネットの制限機能をHPで紹介したものの、対応が後手に回ったとの批判も出ており、子供の遊ぶゲーム機をネットにつなぐことの難しさを露呈した。
本体更新に数時間
一方、WiiUの販売不振の原因の一つはネット環境の脆弱(ぜいじゃく)さといわれている。
WiiUには有線の接続ポート(端子)はなく、無線でネットにつなぐか、無線環境がない場合は別売りの「LANアダプタ」を購入することになる。
据え置き型ゲーム機でネットに接続して対戦ゲームなどを行う場合、わずかな遅延でもゲーム進行の妨げになることから、通信が安定する有線で遊ぶことが常識だ。このため、無線機能しかなく、アダプタも高速通信に対応していないWiiUが「ゲーマーに不人気なのは当然だろう」(関係者)。
また、最近のゲーム機はネットを利用して常に最新の状態に更新する必要がある。しかし、WiiUは24年12月の発売当初、更新に数時間かかるとの報告が相次ぎ、「すぐにゲームが始められない」と批判が殺到した。任天堂も公式HPで「更新に1時間以上かかる可能性がある」と注意喚起し、時間がかかることを認めている。いずれもライバルのソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)や米マイクロソフト(MS)の据え置き型ゲーム機では起こらなかった問題だ。
任天堂は、1年間に数本しかソフトを買わない「ライトユーザー」に支えられている。だが、ライトユーザーの多くがスマートフォン(高機能携帯電話)向けゲームに移行していることから、任天堂はフルハイビジョン(HD)画質に対応したWiiUの発売でゲーム好きを獲得することをもくろんでいた。
任天堂の岩田聡社長もWiiUの発売前は「(ゲームが好きな)コアゲーマーを取りにいく」と述べ、コアゲーマーの獲得に執念をみせていた。ところが、有線接続できないなどの“欠点”の影響もあり、コアゲーマーの多くはSCEやMSのゲーム機で遊ぶという構図ができあがってしまっている。
時代はクラウド移行?
任天堂がネットへの対応に苦慮する中、ゲーム機は次の時代に移行しようとしている。その主役が、ネットを通じて情報をやり取りする「クラウド」だ。
SCEは、24年に米国クラウドゲーム大手のガイカイを買収。11月に欧米で発売した据え置き型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」では、ネットに保存している初代PSからPS3までのゲームソフトを遊べるクラウド構想を発表している。
MSも、PS4とほぼ同時期に欧米で発売した据え置き型ゲーム機「Xbox One(エックスボックス・ワン)」でクラウド対応を打ち出すが、任天堂については「クラウドはまだ先の技術」として投資も少ない。
クラウドで実際に何ができるのか今ひとつ見えてこないが、それでもゲームでクラウドが実用化されるようになると、技術力で劣る任天堂がさらに取り残される可能性は否定できない。
コアゲーマーも楽しめるゲーム機を目指すのか。それとも、低年齢層を対象にした「子供のおもちゃ」路線を進むのか。ゲーム王国・任天堂が岐路に立たされている。(藤原直樹)
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